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たとえ今がいつであろうと

こんばんは 

 

子供の頃は色々な約束事があった。儀式のようなもので、特に寝る前のものが多かった。 

 

必ず氷を二つ頬張ってから寝室へ向かう。隣の部屋で調べものをしている父にお休みと三回言う。これは三回お休みと返してもらわなければいけないのだ。だから三回目を聞く迄何度でも呼び掛けていた。それから眠りに就く前にお祈りをする。自分と家族に不幸が訪れないように、どうか護って下さいと祈っていた。 

 

けれど洋の東西を問わず大勢の神様にお願いをしていたので、随分欲張りな日本人だと思われていただろう。まぁ大方幸せにやって来れたので、どうやら祈りは聞き入れられたようだ。無邪気さが受けたのだろうか。 

 

バカだなぁ。 

 

とにかく嫌なガキだった。親もよく我慢してくれたものだ。放り出しはしなかった。たまに締め出されたりはしていたけれど。 

 

小ずるくて生意気、我儘で病弱。嘘つきだし文句ばかり言っていた。こんな子供、自分に出来てしまったらと思うとゾッとする。けれど一緒にいてくれた。 

 

親を捨てて東京に出てきた今でも、留守電やメールで居場所を与えてくれる。一年に一度、正月三が日にしか帰らずに、その三日間でさえ遊び歩いている親不孝者に松阪牛をたらふく食べさせてくれる。 

 

兄がいて。仲なんて最悪で、久々に実家で会っても口すら聞かないことだってある。親戚まわりもせずに惰眠を貪る僕を、兄は我儘王子と呼んでいる。けれど僕の生涯で聞いた中の、一番優しい声は、彼が僕に掛けてくれたものだった。

 

母に先日電話した。泣いていた。近所の遊歩道をめちゃくちゃに歩きながら、ずっと聞いていた。 

 

父は、僕が幼い頃、毎晩僕が寝る前に本を読んで聞かせてくれた。登場人物ごとに台詞の読み方を変えてくれたりして、演技は下手なんだけれど、面白かったなぁ。枕元に感じる確かな存在。聞こえてくる少し擦れた声。暖かな寝床。いつも知らない内に眠っていた。僕は本を読むのが好きなのだけれど、きっとその頃の記憶がそうさせているのだ。 

 

家族は僕に思い出と影響を与えてくれる。 

 

僕が欲しい言葉を、彼らは時々言ってくれる。僕がこうあって欲しいと思う存在、彼らはそういうものでいてくれる。僕がいることを嬉しいと思ってくれる。疑わずにいさせてくれる。 

 

自分の存在が世の中に影響を与えるようなものでないことは知っている。けれど、僕が生きていることを家族が良しとしてくれる。そして恐らくは、何らかの、少しだけでも、僕は家族に善い影響を与えている。そしてそれを、それも、僕は知っている。